組手での体験

少年部のスパーリングについては
なるべく目を離さないようにしているのだが

ふと死角になり目を離した瞬間、

Tが倒れて泣いていた

慌てて駆け寄り、どうしたのかと問うと
 
Kの蹴りがカウンター気味に前脚内股に入り
痛くて泣いてしまったようだ。
 
ケガをしている訳ではないが、Tは泣き止むまで後ろで休ませました。

稽古後、二人とは別々に話を

泣いたTは
優しくて、気弱で、普段の稽古では
相手に打ち返すことが出来ずに
ずるずると下がってしまいます。
 
武道なのだからこういう事(痛いこと)もある。
人を傷つけることを学んでいるのだから油断しないで真剣に稽古しなさい。
強い気持ちを持って、やられてもやり返しなさい。
と伝え、多少蹴られても耐えられるよう
受けが間に合わなかった場合の対処法を教えました。
 
一方、倒したKは
興奮してくると自分を抑えられず
スパーリングで手加減することを忘れてしまいます。(普段は優しいんですけどね)
 
前回初めて組手試合に出たときは「顔面殴打」で反則負け
肩にも力が入りまくっています。
Kには
興奮して肩に力が入ると、余計疲れるし、自分の防御も疎かになるんだよ。今日も何度も上段を蹴られただろう。
道場での稽古は潰しあう訳ではないし、このままでは誰もKとスパーリングをしてくれる人がいなくなるよ
前回の試合でも負けて泣いていたけど、冷静に戦わなければ勝てないよ。
だから普段の稽古でも冷静にいるように自分をコントロールしなさい。
でも、Kが今まで努力したからこそ相手が倒れたんだよ。
すごく強くなっているからこれからも頑張りなさい。
と話しました。
 
優しくて気持ちが弱くて、打ち返せないTは
年下の後輩にやられて、痛くて情けなくて、悔しかったでしょう。

興奮すると自分を抑えられないKは
初めて人を倒したうれしさの一方、
気持ちをコントロールすることが出来ずに泣かせてしまった申し訳なさ

何度も上段を蹴られてしまったもどかしさが混在しているでしょう

大山総裁の有名な言葉で
「牛を川に連れて行くのは、人の役目で、川の水を、飲む飲まないは、牛の問題だ」
というのがあります。

言わずもがなですが、ここでは
牛=空手修行者、川=道場、人=親・指導者 でしょう。

TもKもやる気は見られるものの、指摘された弱点がなかなか治せません。
 
おそらく、頭では解っていても、楽な方に行ってしまうからか、何度注意しても治らない。
 
Kなどは自主トレで走り込みを行ったり、努力しているようですが。
 
指摘した弱点は、解った気にならないで、習慣化するまで(癖になるまで)自主トレで矯正するしかないのです。
 
この一件が、TとKという牛達の喉の渇きとなり
川の水を自ら飲む「水を飲む気になった牛達」になってくれることを祈るばかりです。
 
稽古で怪我をしてしまうのは論外ですが
 
叩かれて蹴られて防御を覚え、出来ないことを少しづつ出来るようになる。
 
痛い思いをして、殴られればこんなにも痛いんだ、と人の痛みを知る。
 
繰り返すことで怖さを克服する。
 
強くなることで自分に自信を持つ。
 
などなど、空手から学ぶことは数多くありますし、色々な経験をして子供たちは成長していきます。